14回めの観劇 浅草木馬館 劇団美松 『日本橋』
劇団美松がもう一度見たくて、ふたたび浅草木馬館へ。
ちなみに、前回書き忘れましたが、入場料は1800円。座布団などの追加料金はなしで、予約は別料金。予約席以外はどこに座ってもよくて、夜の部は午後4時に開場、公演は午後5時からです。
今日のお芝居は泉鏡花の『日本橋』。休憩を挟んで、全編、後編の長めのお芝居でした。
あらすじを舞踊ショーの写真とともにお伝えします。
日本橋には二人の人気芸者がいた。
滝の家の清葉(きよは)と稲葉家のお孝(こう)。
清葉は上品で内気、お孝は勝ち気で積極的。
清葉はさまざまな男に求婚されるが、旦那がいるので断っていた。旦那といっても籍には入れてもらえない。それでも家庭の事情があり、別れることはできなかった。清葉は自分の意志でどこかへ行くことも、だれかを好きになることもできない身だった。
お孝は清葉が拒んだ男を片っ端から自分のものにしてきた。今は五十嵐伝吉という男と腐れ縁のような関係になっているが、この五十嵐も、もとは清葉に振られた男だが、今はお孝にご執心で、すべてを捨ててお孝にしがみついている。
医学士の葛木晋三は、ひな人形を残して失踪した姉にどこか似ている清葉に惹かれて7年、ようやく思いを打ち明けたが、振られてしまう。清葉も葛木(かつらぎ)に惹かれていたのかもしれないが、自分ではどうしようもない身の上だった。
ひな祭りの翌日、葛木は断ち切れない清葉への想いを抱えながら、一石橋(いちこくばし)からサザエとハマグリを川に投げ落とす。それはひな祭りのお供え物で、殺生をしたくないから川に放したものだった。
ところが、それをよからぬものを投げ捨てたと思い込んだ警察官に見咎められて、連行されそうになってしまう。そこにお孝が現れ、窮地を救ってくれる。もちろん、お孝は葛木が清葉に振られたことを知っていて近づいてきたのだった。
しだいに葛木に夢中になっていき、いつしか葛木との結婚を夢見るようになるお孝。そんなお孝に執着し、いつまでも追ってくる五十嵐。自分が発端となりながらも、三人を傍観するしかない清葉……。
芝居で描けない部分のストーリーや登場人物の詳しい説明は、場面のあいだに泉鏡花本人が登場してわかりやすく話してくれることで、スムーズに話の中に入っていけました。
それにしてもお孝は、清葉から横取りするんじゃなくて、捨てた男を拾うんですよね。嫉妬とかライバル心とかより、清葉に憧れる気持ちが強かったのか。
刃物を向けられても人を呼ばずに自分で対処するぐらい肝の据わった強さがありながら、生まれ育ちの違いというもので、どう頑張っても清葉のような上品な女性にはなれない。勝ち気なお孝にはそれが我慢できなかったのでしょうか。
お孝は感情剥き出し、好きな人ができると全身でぶつかっていくような女性です。拗ねたり、子どもっぽく甘えたり、気を惹こうとふざけて見せたり、可愛いけれど、どこか危なっかしいところもある。男性との距離感をうまく保てない女性なんですね。
気を惹くのは上手いのに、愛し方が下手なお孝と、愛することそのものを知らない清葉。真逆でありながら、どこか似ている二人は、しょせん芸者という弱い立場でもありました。
物語は大きく展開し、悲しくも、未来への希望の持てるラストでした。
それにしても、お孝が葛木に月明かりで見せた、つぶし島田に梅の枝はなんだったのかなあ。失踪した葛木の姉が残したひな人形とそっくりなその姿は、実は知っていてやったのか、偶然だったのか。気になるなら原作読むしかないのかしら。
お芝居は休憩を挟んだとはいえ、2時間を越す長いもので、舞踊ショーは短くなるのかなと思いましたが、そんなことはありませんでした。
南條はる雄座長のこのド派手な衣裳は、登場したとき客席がどよめきましたw
松川小祐司座長は最初の女形のときも、2度目の立役のときも隙がなさ過ぎて、踊り終えてからおハナ(ここではレイもあるのでこういう表記にします)を渡す列ができてました。
本当にこの方には緩みがないのだなあ。ご本人は恋川純弥さんに憧れているそうですが、私からしてみたら、だれの延長線上にもない唯一無二の存在です。芝居にも舞踊にも圧倒されました。
ラストショーは警察官役だった藤川真矢さん(舞踊ショーの写真取り損ねました、ごめんなさい)が別のお仕事で抜けたけれど、ゲストの南條はる雄座長が加わったので、また男性6人に。
盛り上がったあと、6人のトークでさらに盛り上がり、終わったのは午後9時になろうかというところ。約4時間の長丁場でした。
南條はる雄座長が「こんなことを毎日やっているのは、この人たちがアホだからです」と冗談でおっしゃってましたが、本当に、疲れも見せず、凄すぎます。これからやる明日の準備もどれくらいかかるのか。
観ていただけの私のほうが、最後に忘れたり、失敗したりでヨレヨレしてますねw