16回めの観劇 浅草木馬館 劇団美松 特選狂言『山名屋浦里』 ラストショー『雪散華』
この日は先にミニショーがありました。お芝居が短めだからかな。
お芝居のあらすじは、またミニショーと舞踊ショーの写真とともにご紹介していきますね。
お芝居は、特選狂言『山名屋浦里』でした。
ある藩の留守居役として江戸に来た酒井はとにかく真面目で、まっすぐな人。
ほかの藩の留守居役の秋山や田中などが茶屋通いで贅沢に遊び歩いていることが気に入らないが、秋山と田中からは、融通の利かない田舎者と馬鹿にされている。
酒井に恥を掻かせたい秋山と田中は、次の留守居役の寄り合いには、全員が江戸の妻を連れて来ると言う。江戸の妻とは吉原で贔屓にしている遊女のことだ。
酒井は国もとで待つ妻がいるのに、江戸の妻なんて作るつもりはなかったが、自分を馬鹿にする留守居役たちにどうしても一泡吹かせてやりたかった。
町田と田中が去ったあと、屋形船に乗っていた禿が扇を川に落としてしまったことを知り、酒井は川に落ちかけながらも扇を拾ってやろうとする。
ところが必死に取ろうとするが、なかなか取れず、そこに、いいんですよ、と禿の後ろから声を掛けてきたのが、吉原一の花魁と謳われる、山名屋の浦里だった。酒井はその美しさに驚く。
酒井はどうしても寄り合いに浦里を連れていきたくて、山名屋へ交渉に行く。
山名屋の奉公人にも、主人にも、それは無理な話だと諭されるが、そこに浦里本人が現れて……。
ひねりのないストレートなお話でした。でも、ハッピーエンドにほっこりとして、安心して観ていられるお話でもありました。
もとは落語だそうですが、実話が元になっているけれど、話が単調すぎて落語にはできないと一度は断られたものらしいです。
ただ、ラストの場面でちょっと物足りなさを感じてしまいました。
最後に近寄りがたいほど豪華で美しい花魁道中の浦里が、酒井をお兄さんと呼んでくれるところに感動しなきゃいけないのに、その豪華な衣裳が寄り合いの席でも着ていた衣裳の使い回しだったんですよね。
だから、今ひとつ花魁道中の豪華さも近寄りがたさも感じなくて、感動し損なった気がしました。あそこは、どーんと、浦里はこんなに凄い花魁なんだと見せつけなきゃいけない場面だから、花魁道中まではあの豪華な衣裳を封印しておいたほうが良かったんじゃないかなあ。
で、そのあとの舞踊ショーは全体にしっとり落ち着いた感じのものが多かったんですが、これはちょっと凄かったですね。
これまでで16回ほど舞踊ショーを観てきて思ったんですけど、多くの方が曲の歌詞を表現するような踊りをするんですが、役者さんなんでそこに情感を込めて魅せてくださいます。
でも、たまにそうじゃなくて、大きな絵を描いてくれる方がいるんですね。その曲から着想を得て、衣裳や踊りや背景や群舞などで、自分なりの一つの絵を完成させるというか。
ミュージックビデオなんかも歌詞をそのままドラマ仕立てにするとかじゃなくて、曲からイメージを膨らませた世界を見せてくれるじゃないですか。
それは作った人なりの世界で、ときには曲のイメージからかけ離れているように感じることさえあるけど、やっぱり曲と合わせて見ていると世界が広がって、曲に合わせて、じゃなくて、曲も合わせてすべてを総合して一つの絵になっているというか。
そういうのをたまに見せていただくと、私はすごく感動してしまいます。
ラストショーは、藤川真矢さんが新風プロジェクトという大きな企画のお芝居のほうに行っていて、代わりに天夜叉さん、松丸家小弁太座長さんが入って男性7人による、かなり男っぽいショーでした。
ちなみに、劇団松丸家は関西の劇団ですが、3か月間、関東で頑張っているそうです。よく喋り、よく動く座長さんだったから、かなり盛り上がっているのではないでしょうか。