50回めの観劇 三吉演芸場 春陽座 『刺青奇偶』 ラストショー『阿修羅ちゃん』
三吉演芸場に春陽座(はるひざ)を観に行ってきました!
土日スタートで行けなかったので、平日の外題がよさそうな日にしようと思ったら、いきなり観たい外題が。『それは恋』なんて素敵なタイトルで、あらすじを調べたらストーリーもおもしろそう! 前もって登場人物を調べてメモしたり、元ネタを調べたりして準備も万端!!
と思って行ったら、違うお芝居でした。昼夜で外題替えになったのだとか。いつ変更に? たしか昨日見たときは三吉演芸場のHPに『それは恋』としか書かれていなかったはず。春陽座の公式ツイッターではまだ『それは恋』のみになっているのに……。
なにか理由があったのなら仕方ないけど、お芝居前にも口上でも説明はありませんでした。周知も不十分なまま開演時間を30分引き上げたり、外題を急に変更したり、大衆演劇あるあるなのかなぁ。
でもまあ、観たことのないお芝居で、これはこれで良かったんですけどね。
ということで、お芝居は『刺青奇偶(いれずみちょうはん)』でした。またしても長谷川伸先生の作品です! 歌舞伎にもなっていて、中村勘三郎、坂東玉三郎、片岡仁左衛門など豪華な出演者だったりとか。
それでは、舞踊ショーの写真とともに、あらすじの紹介を。
賭場で一人の男を傷つけてしまった半太郎は、江戸払いとなり、木更津の海に辿り着きました。
そこに熊介が追ってきて、おまえがおサダにべらべら喋るから、渡した恋文をすべて突っ返されたと怒ります。
女房を岡場所に売ったおまえのほうが悪いと半太郎が言い返し、熊介が刃物を出したので、半太郎は熊介を海に突き落としました。
熊介は自力で這い上がりますが、入れ替わるように女郎のお仲がやって来て、海に飛び込んでしまいます。半太郎もすぐに飛び込んで、お仲を助けました。
なぜ身投げをしたのかと訊ねられたお仲は、親兄弟もなく、借金を背負わされて岡場所をぐるぐると回され、生きているのが辛すぎたと訴えます。
半太郎は、いい男を見つけて所帯を持てば幸せになれるのにと言いますが、お仲は、男なんてみんな同じだ、体を求めてくるだけだと吐き捨てます。
半太郎はお金を渡し、宿屋に泊まって体を休めろと言い残して去ろうとしました。半太郎のやさしさを知り、これまでの男とは違うと気づいたお仲は半太郎にしがみつきます。やがて二人は結婚して、所帯を持つことになりました。
一年後、お仲は労咳(結核)となっていました。近所に住むお竹おばさんが世話を焼いてくれますが、半太郎は博打に明け暮れ、瀬取りの仕事で得たお金を家に入れてくれません。
半太郎はお竹から、医者にお仲は今日明日の命と言われたことを聞かされ驚きますが、お仲はすでにそのことを知っていました。
それでもお仲が心配していたのは、自分が死んだら、やさしい半太郎が自分を責めて、ますます博打にのめり込んでしまうだろうということでした。
お仲は半太郎の腕にサイコロの刺青を入れ、もう博打はやめると誓わせます。
半太郎はそんなお仲の思いを知りながらも、せめて息を引き取る前に所帯道具を揃えてやりたいと、賭場で騒ぎを起こし、鮫の政五郎の子分たちに捕まってしまいます。
鮫の政五郎に理由を話せと言われた半太郎は……。
ということで、今まで見た長谷川伸のお芝居の中でも、ダントツに科白が良かったです! 登場人物の心情がしっかりと伝わってくるし、月並みではない言葉のやりとりがおもしろくもあり、科白の一つずつが心に刺さりました。
それになんと言っても、お仲役の澤村かなさんと半太郎役の澤村心座長の演技がうまくて、感情がこもるところでは目が潤んでるし、良い科白がちゃんと生きるお芝居になっていました。
でも、最後に出てきた鮫の政五郎役の澤村新吾さんはもっと凄かった! 存在感があって舞台の空気が変わるし、最後の場面の前だというのに短いアドリブで笑わせる余裕まで見せて、格の違いを見せつけてくれました。まさにラスボス!
それにしてもこのお芝居、見終わってまず思ったのは、半太郎はまたすぐ賭け事をやるようになるだろうなってこと。ある程度の人生経験積んだ女性だったら、みんなそう思うんじゃないかな。そもそも余命幾ばくもないお仲は少しでも半太郎と一緒にいたいのに、半太郎はお仲のために所帯道具を揃えたいと、賭場へ行ってしまうんですよね。お仲が刺青までして止めたのに。
愛しあっているはずなのに、お互いのことを思っているのに、求めていること、やっていることは擦れ違いという、男だから、女だからのわかりあえない悲しさみたいなものを感じました。そう考えると、単なる悲恋じゃなくて、なんだかものすごく深いお話でしたね。
そして、舞踊ショーです!
17歳の澤村煌馬副座長と16歳の澤村優夢花形です。春陽座は今、世代交代の手前というか、過渡期というか、そういう時期みたいですね。下の世代が揃っているけど、まだみんな十代で、五年後ぐらいが楽しみって感じです。
めっちゃ可愛かった澤村姫々さんはまだ15歳だそうです。
座長の女形姿はすでに渋いって感じですね。
姫々さんの着物にも頭の上にもかわいいアザラシが! この子は自分の好みがハッキリあるから、見ていて楽しいですね。
澤村愛夢さんは19歳。大人の女性になりかけ、いや、もうなってるのかな。ほんとに若くてきれいです。
澤村煌馬副座長は女形になっても、少女ですねえ。
澤村優夢花形の女形はとってもきれいでした。背が高くて顔も整ってるし、五年後にどうなってるかは、この方の成長次第かなあ。
舞踊ショーは一人ずつで踊るのが多かったのですが、座長と副座長の相舞踊とか、男女二人の組み合わせとか、副座長が女形で花形が立役とか、そういうのもいろいろ観られたら楽しいかなと思いました。
ではでは、前売り券も買ったし、また行きますねってことで。